「みすゞ通り」は、昔ながらの風情が残るまち並みです。

四国の野の花はこちらでご覧ください 
SEIKATSU | CASSIOPEIA | LINKNAVI | YUMENET | MIMISUMA | TOP PAGE


2017' JUN 17 Message

わずか26歳で短い生涯を閉じた金子みすゞ。幼少期を過ごした金子文学堂跡地に建つ記念館は、遺構集や着物などの遺品の展示、詩の世界を音や光で体感できるギャラリーなとを備え、みすゞの生涯や生きていた時代を偲ぶことができます。 * ♪


+ + 金子みすゞ 詩集 + +

■さみだれ
つゆに入っても、はかばかしく降らなかった雨か、日曜を見込んだように、ふり出しました。
づれづれを慰めるため開いた物語にもあきて、障子をあけて外を見ました。うす墨いろの空はいつ青い色がみえようとも思われません。番がさや蛇の目が三つ四つ続いて通ったあとは、ひっそりとして軒のしずくの音だけが時々きこえます。ふと下の方で「いやなお天気で。だも百姓衆は大喜びでしょう」という声がしました。
私はみのを着て笠をかぶって、雨にぬれながら田植えをしている人の姿を、心にうかべました。
その時目の前をつばめがすうと飛んでとらりの軒へはいりました。つばめでさえもかせいでいる。こう思うとぼんやりしているのがはずかしいようで、すぐに立ってゆい物を出しました。
■井戸ばたで
お母さまは、お洗濯、たらいの中をみてみたら、しゃぼんの泡にたくさんの、ちいさなお空が光ってて、ちいさな私がのぞいてる。
こんなに小さくなれるのよ、私は魔法つかいなの。
何かいいことして遊ぼ、つねべの縄に蜂がいる、私も蜂になってあすぼ。
ふっと、見えなくなったって、母さま、心配しないでね、ここの、この空飛ぶだけよ。
こんなに青い、青ぞらが、わたしの翅に触るのは、どんなに、どんなに、いい気持。
つかれりゃ、そこの石竹の、花にとまって密吸って、花のおはなしきいてるの。
ちいさな蜂にならなけりゃ、とても聞こえぬおはなしを、日暮れまででも、きいてるの。
なんだか蜂になったよう、なんだかお空をとんだよう、とても嬉しくなりました。
■お風呂
母さまと一しょにはいるときや、私、お風呂がきらいなの。母さまは私をつかまえてお釜みたいにみがくから。
だけど一人でいるときゃ、私、お風呂が好きなのよ。
そこでする事、多いけど。なかで一ばん好きなのは、ぽかり浮かべた木のきれに、石鹸の函や、おしろいの、かけた小瓶を並べるの。
それはすてきな御馳走の、ならんだ黄金の卓子で、私は印度の王様で、白蓮紅蓮咲きみちた、きれいなお池に浸かってて、涼しいお夕飯あがるとこ。
玩具ほ持ってゆくことは、いつかお母さま、禁めたけど、時にゃ隣の花びらが、散ってお船になってくれ、時にゃ私の指たちが、魔法をつかって長くなる。
だれも知ってやしないけど、私、お風呂が好きなのよ。
■わたしと小鳥とすずと (みすゞの小庭のプレートから)
わたしが両手をひろげても、お空はちっともとべないが、とべる小鳥はわたしのように、地面をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、きれいな音はでないけど、ある鳴るすずめはわたしのように、たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい。

●中国の風景
■TOP
■みすゞ all



♪ 。 . : * ・ ゚ ゚ ・ * : .        . : * ・ ゚ ゚ ・ * : . 。 ♪
1998-2017 itigoNet & StrawberryClub, internet cection Since 1998.12.20

当ホームページ内の画像およびイラストなど全ての内容につきまして無断転載・転用を固くお断りいたします。