■ 小泉八雲旧居 北側の庭 北側の第二の庭は自分の好きな庭である。大きな草木は何1つない。青い石が敷いてあって、小池が一つ、奇妙な植物がそま縁にあり、小さな島が一つその中にあって、その島には小さな山がいくつかあり、高さは殆ど一尺にも足らぬが、恐らくは一世紀以上の年を経たもの、その中には一寸胞子的な、桃と松と躑躅がある小型の湖水が一つ、その中心を占めている。ではあるがこの作品は、そう見せようと計画されていたようにして見ると、目に少しも小型なものとは見えぬ、それを見渡す客間の或る一角から見ると、石をなげれば届くほどの遠きに、向かう真の島のある、真の湖岸の景である。 この池の縁に其処此処に、そして殆ど水と水平に、その上に立つことも坐ることも出来、その湖沼住者を窺うことも、その水中植物を世話することもできる。平たい大きな石が置いてある。池には、その輝かしい緑の葉面が、水の表に油の如く浮いて居る美しい睡蓮があり、また二種類の、一つは淡紅い花をつけるもの、一つは純白の花をつけるものと、多くの蓮がある。岸に沿って、三稜鏡的董色の花を咲かす菖蒲が生えて居り、そこからまた装飾的な種々な、草や羊齒や苔がある。が、この池は蓮池で、蓮がその最も大なる抄趣となって居るのである。葉が始めて解れる時から最後の葉が落つる時まで、その驚くべき生長の一々の相を見るのは楽しみである。殊に雨降りの日には蓮は観察に値する。その盃形の大きな葉が、池の上高く揺れつつ雨を受けて暫くの間にそれを保つ、が、葉の中の水が或る一定の水準に達すると、屹度茎が曲がってポチャリと高い音を立てて水を零す ..... 。北側の庭の説明板に書かれています。
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